集合写真の自分の笑顔だけが、どこか硬く見える。
そんな小さな引っかかりを抱えている方は、少なくないと思います。
ライターの吉岡朋子です。
歯科医の先生方に取材を重ねるうちに、笑顔の印象は歯の白さより「歯と唇の位置関係」で決まる部分が大きいと知りました。
この記事では、その関係を表す「スマイルライン」の見方と、歯科で整える方法、今日からできる工夫をお伝えします。
目次
スマイルラインとは?笑顔の印象を決める「歯と唇の関係」
スマイルラインは、笑ったときに見える上の前歯と唇の関係を指す言葉です。
歯科の世界では、前歯の先端がつくるカーブと下唇のカーブ、そして上唇の位置という二つの見方で語られることが多いようです。
上の前歯の先が描くカーブと下唇
1984年に米国の歯科医Tjanらが発表した研究では、454人の顔写真をもとに「平均的な笑顔」の特徴をまとめています。
その内容はPubMedの論文抄録で読むことができます。
- 上の前歯がほぼ根元から先端まで見えている
- 前歯の先端を結んだカーブが、下唇の内側のカーブと平行になっている
- 前歯の先端が下唇に軽く触れるか、わずかに離れている
- 上の前歯6本に加えて、その奥の小臼歯まで見えている
取材でお会いした審美歯科の先生は、二つ目の「平行なカーブ」をいちばん大事にしていると話していました。
前歯の先が下唇に沿ってゆるやかな弧を描くと、笑顔がやわらかく、若々しく見えるのだそうです。
反対に、先端が一直線だったり、真ん中がへこんで逆カーブになっていたりすると、同じ笑顔でも少し硬い印象になります。
歯の見え方で分かれる3つのタイプ
もう一つの見方が、笑ったときに上唇がどこまで上がるかです。
一般的には次の3つに分けて説明されます。
| タイプ | 笑ったときの見え方 | 写真での印象 |
|---|---|---|
| ハイスマイル | 前歯の全体に加えて、歯ぐきが帯状に見える | 明るく華やか。見えすぎると歯ぐきが目立つ |
| アベレージスマイル | 前歯の75〜100%と、歯と歯の間の歯ぐきが少し見える | もっとも自然で、多くの人がこのタイプ |
| ロースマイル | 前歯の見える部分が75%未満 | 落ち着いて見える反面、控えめで寂しげに映ることも |
どのタイプが正解ということはありません。
ただ、年齢を重ねると唇の張りが落ちて上唇が下がり、前歯の先もすり減っていくため、上の歯は見えにくく、下の歯が見えやすくなる傾向があります。
40代、50代になって「昔より笑顔が地味になった」と感じるのは、気のせいではないのかもしれません。
写真で笑顔がぎこちなく見える主な原因
自分の笑顔に違和感があるとき、その正体は大きく三つのどれかであることが多いです。
鏡の前で思い当たるものを探してみてください。
歯ぐきが見えすぎる「ガミースマイル」
笑うと上の歯ぐきが大きく見える状態を、ガミースマイルと呼びます。
何mmからそう呼ぶかは論文によって3mm以上、4mm以上と基準が分かれますが、歯ぐきが3〜4mmほど見えると気になり始める方が多いようです。
原因は一つではありません。
上唇を引き上げる筋肉がよく動く方、上唇が短めの方、歯ぐきが歯にかぶさって歯が短く見えている方、上あごの骨が縦に長めの方など、人によって事情が違います。
原因が違えば治し方も変わるので、ここは自己判断せず歯科で診てもらうところです。
前歯の先端のカーブが乱れている
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、前歯の先は少しずつすり減って平らになります。
また、真ん中の2本よりも横の歯が長く見えていると、カーブが逆向きになり、笑顔が「への字」に近い印象になります。
ご本人は気づいていなくても、写真で横から光が当たると意外とはっきり写るものです。
歯の色と左右差
前歯の黄ばみや、1本だけ色の違う差し歯は、写真では実物以上に目立ちます。
被せ物は年月とともに歯ぐきとの境目が黒っぽく見えてくることもあり、笑顔の印象を沈ませる原因になります。
さらに、笑ったときに口角の上がり方が左右で違う方は、写真を撮ると片側だけ歯が多く見えて、それが「ぎこちなさ」の正体になっていることもあります。
歯科でできるスマイルラインの整え方
整え方は、何が気になるかによって選び方が変わります。
おおまかな対応を表にまとめました。
いずれも見た目を整える目的の治療は、基本的に保険のきかない自由診療になります。
| 気になること | 主な方法 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 前歯の長さ・カーブ | 矯正治療、樹脂で形を足す方法、ラミネートベニア、被せ物の作り直し | 矯正は時間がかかるが自分の歯を活かせる |
| 歯ぐきの見えすぎ | 歯肉の整形、歯冠長延長術、ボツリヌス注射、矯正や外科手術 | 原因によって選ぶ方法がまったく違う |
| 歯の色 | オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング、被せ物の交換 | 被せ物や詰め物はホワイトニングで白くならない |
前歯の長さや形を整える
前歯の先のカーブを整えるには、歯の位置を動かす矯正と、歯の形そのものを足したり覆ったりする方法があります。
すり減った先端に歯と同じ色の樹脂を盛って形を整える方法は、歯をほとんど削らずに済むのが利点です。
一方、ラミネートベニアは歯の表面を薄く削って、薄いセラミックを貼り付けます。
取材先の先生が口をそろえておっしゃるのは、「1本だけを見ずに、唇とのバランスで設計する」ということでした。
歯を白く長くしすぎると、かえって作り物めいた笑顔になってしまうからです。
歯ぐきのラインを整える
歯ぐきが歯にかぶさって歯が短く見えている場合は、歯ぐきを少し切って形を整える歯肉の整形や、骨の形まで整える歯冠長延長術が選ばれます。
上唇が上がりすぎることが原因なら、唇を引き上げる筋肉にボツリヌス注射を打ち、動きを穏やかにする方法もあります。
ただし注射の効果は数か月かけて少しずつ薄れていくため、保ちたい方は繰り返し通うことになります。
上あごの骨の形が主な原因のときは、矯正や外科手術を組み合わせる大がかりな治療になることもあります。
歯の色を整える
日本歯科審美学会の一般向けページによると、歯科医院で行うオフィスホワイトニングは35%程度の過酸化水素を含む薬剤を塗って光を当て、自宅で行うホームホワイトニングは10%過酸化尿素のジェルを専用のトレーに入れて使います。
同じページには、歯がしみる知覚過敏が起きることや、1〜3年で色が戻る場合があることも書かれています。
むし歯や歯周病があると先にその治療が必要になる点も、覚えておきたいところです。
色の違う差し歯が気になる場合は、ホワイトニングでは白くならないので、周りの歯の色を整えてから被せ物を作り直す、という順番で考えるのが一般的です。
治療の前に、今日からできること
いきなり治療に進まなくても、自分のスマイルラインを知るだけで、写真の笑顔は変わってきます。
私自身、取材で教わったことを試して、写真に写る自分への苦手意識がずいぶん薄れました。
鏡とスマホで自分のスマイルラインを確かめる
自然に笑った顔を、スマホのカメラで正面から撮ってみてください。
作り笑いより、誰かの冗談に笑った瞬間に近い顔のほうが参考になります。
- 前歯の先のカーブは、下唇のカーブに沿っているか
- 歯ぐきはどのくらい見えているか
- 左右の口角は同じ高さまで上がっているか
- 前歯の色に1本だけ違うものはないか
この写真は、あとで歯科に相談するときにもそのまま役立ちます。
写真映えする笑い方のコツ
歯の形を変えなくても、笑い方で印象はかなり変わります。
コツは、上の前歯の先が下唇に軽く触れるくらいまで口を開くことです。
歯をぎゅっと見せようとして上唇を引き上げすぎると、歯ぐきが多く見えたり、口元がこわばったりします。
カメラはご自分の目線より少し高い位置に置くと、前歯のカーブが下唇に沿って見えやすくなります。
撮られる直前に一度ふっと息を吐いて肩の力を抜くと、口元のこわばりもほどけやすくなります。
歯ぐきを下げない毎日のケア
スマイルラインの土台になるのは、健康な歯ぐきです。
MSDマニュアル家庭版によると、歯ぐきが下がる原因には、もともと薄い歯ぐきであることに加えて、力任せの歯磨きや研磨剤の粗い歯磨き剤、そして加齢があります。
一度下がった歯ぐきは自然には元に戻らないため、毛先のやわらかい歯ブラシを歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、やさしく動かす磨き方がすすめられています。
白さを求めて研磨剤入りの歯磨き剤でゴシゴシ磨くと、歯ぐきを傷めてかえって歯が長く見えることもあります。
美しさのためのケアが逆効果にならないよう、力加減には気を配りたいですね。
歯科に相談するときに伝えたいこと
審美的な治療は選択肢が多く、同じ悩みでも医院によって提案が変わります。
納得して選ぶために、相談の場で押さえておきたい点をまとめます。
「どこが気になるか」を写真で見せる
「なんとなく笑顔が気に入らない」とだけ伝えると、先生も何を優先すべきか迷ってしまいます。
先ほど撮った笑顔の写真や、気になった集合写真を見せながら、「歯ぐきが見えるのが嫌」「前歯の先がまっすぐなのが気になる」と具体的に話すと、診断も提案もぐっと的確になります。
削る量・後戻り・費用を確認する
説明を受けたら、次のような点を遠慮せずに聞いてみてください。
- 歯をどのくらい削るのか、削らない方法はないか
- 効果はどのくらい続くのか、後戻りや再治療の可能性はあるか
- 治療期間と通院の回数
- 総額の費用と、やり直しが必要になったときの扱い
- 治療後の見た目を、写真やシミュレーションで事前に確認できるか
複数の方法を比べて、それぞれの利点と欠点を説明してくれる歯科医院なら、安心して任せやすいと思います。
まとめ
写真映えする笑顔の鍵は、上の前歯の先が下唇のカーブに沿い、歯ぐきが見えすぎないバランスにあります。
気になる原因が歯ぐきなのか、前歯の形なのか、色なのかによって、選ぶ方法は変わります。
まずはスマホで自然な笑顔を撮り、自分のスマイルラインを知るところから始めてみてください。
笑い方を少し変えるだけで満足できる方もいれば、歯科に相談して長年の悩みが軽くなる方もいます。
取材のたびに感じるのは、口元に自信が持てると、人はもっと気軽に笑えるようになるということです。
次に写真を撮るとき、今より少しだけ楽しい気持ちでカメラの前に立てますように。