歯医者さんというと、どうしても「痛そう」「怖い」「あの独特の音と匂いがイヤ」というイメージを持たれる方は少なくありませんよね。
実は私も大学の歯学部に在籍していた頃、患者さんの中には「もう少し早く来ていただけたら負担が減ったのに」と思うケースがあって、もどかしく感じることがありました。
一方で、苦手意識は決して珍しいものではなく、「歯医者に対する恐怖は自然な感情」と心理学的にも言われています。

そこで今回は、実際のアンケート調査をもとに、多くの方が抱いている「歯医者が苦手」という気持ちの裏側に迫りつつ、それを克服するための方法をお伝えしたいと思います。
私はもともと歯学部で学んだ後、さらに大学院で心理学を専攻し、いまはメディカルライターとして予防歯科や口腔ケアに関する情報をお届けする活動をしています。
歯の健康は「痛くなる前の予防こそが肝心」なのですが、どうしても歯科医院に足が向かない方が多いのが現状。
その理由や気持ちを理解していただき、少しでも歯医者に対する抵抗感が和らげばうれしいです。

この記事を読めば、「歯医者に苦手意識があるのは自然なこと」「だけど、工夫次第で克服できる」という2つの重要なポイントがわかるはずです。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。

アンケート結果から見る「歯医者が苦手」の実態

調査概要と回答者の背景

まずは、今回参考にしたアンケートの概要を簡単にご紹介しましょう。
対象は20〜40代の社会人男女で、ふだんはPCやスマホを利用して情報収集をする層に向けて実施しました。
サンプル数は300名ほどで、歯医者の受診経験がある方を中心に集計しています。

回答率は約8割と比較的高めだったのですが、これは「歯医者が苦手」というテーマが多くの人にとって関心があることを示唆しているのかもしれません。
回答者の属性を見ても、男女比はほぼ半々で、職業や居住エリアもバラバラ。
日頃から「歯が痛いわけではないけれど、歯科医院に行くのはちょっと…」という声が多く集まりました。

「苦手」な理由と頻出キーワード

アンケートの自由記述欄で特に多かったワードは、以下のようなものです。

  • 痛み:麻酔が苦手、治療中の痛みへの恐怖
  • :キーンというドリル音、金属の擦れるような不快感
  • 匂い:消毒液や薬品のにおい
  • トラウマ:子どもの頃の嫌な思い出、抜歯や虫歯治療の痛い記憶

また、これらの不快要素に付随して「いつ終わるのか分からない不安」「治療費がどのくらいかかるか分からない不安」といった声も見られました。
要するに、多くの人が「歯医者=痛くて怖い場所」という図式を思い浮かべてしまい、結果として受診が後回しになっているようなのです。

歯医者が苦手になる心理的要因

過去のトラウマと学習心理

歯科治療の苦手意識には、「過去の嫌な経験」が強い影響を及ぼしていることが、心理学的にも指摘されています。
人は一度痛みや恐怖を感じると、それが脳内で記憶され、次に同じ状況に置かれたときに「また痛いことが起こるのでは?」と身構えるようになるのです。
これを行動心理学では「嫌悪条件づけ」と呼びます。

例えば、小さい頃に泣きながら歯科医院で治療を受けた経験があると、そのイメージがずっと尾を引いてしまう方も。
痛みそのものはもちろん、治療中に聞こえるドリルの音、鼻にツンとくる薬品のにおい、さらには削られる振動などがセットで思い出されることで、歯医者全体に対してネガティブな学習が形成されるのです。

不安の増幅要因:情報不足とコミュニケーションギャップ

もう一つ見逃せないのが、歯医者に対する情報不足からくる不安の増幅です。
「今日はどんな治療をするのか」「痛みはどの程度あるのか」「治療費はいくらくらいかかるのか」などが分からない状態でいきなり受診すると、どうしても身構えてしまいますよね。

実際の歯科現場でも、医療スタッフが忙しくて十分に説明が行き届かない場面は少なくありません。
治療の進め方を詳しく説明しないまま椅子に座らされて、「じゃあ始めますね」と言われると、緊張が高まって当然です。
私自身、歯科助手のアルバイトをしていた頃、患者さんから「いま何をされているんですか?」と頻繁に質問を受けたことを思い出します。
このようにコミュニケーションギャップがあると、不安が雪だるま式に大きくなってしまいます。

歯科医院での克服アプローチ

コミュニケーションを重視した治療計画

では、歯科医院側はどのように「歯医者嫌い」の方をサポートしているのでしょうか。
最近では、多くのクリニックがインフォームドコンセント(説明と同意)を重要視し、患者さんとのコミュニケーションに力を入れています。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  1. カウンセリングルームの設置:治療内容や費用の目安を丁寧に説明できるスペースを作る
  2. 治療計画書の共有:レントゲン写真や口腔内写真を見せながら、どこをどう治すか視覚的に説明
  3. 患者さんとのやりとりをこまめに取る:小さな違和感もその場で聞き取り、対処する

「声をかけてもらえるだけで落ち着く」「遠慮なく質問できるから安心」という声は多くの患者さんから聞かれます。
歯科医院としては時間と手間がかかる部分でもありますが、これが苦手意識を和らげるための最初の一歩になるのです。

痛みや恐怖を緩和する最新の医療技術

さらに、技術面でも痛みや恐怖を和らげる工夫が進んでいます。
代表的なのが「表面麻酔」をはじめとする、痛みを極力抑えるための麻酔法。
麻酔注射の前に歯肉表面にジェル状の麻酔薬を塗ることで、注射針のチクッとした痛みを軽減してくれます。

また、レーザー治療を取り入れているクリニックも少なくありません。
レーザーならドリル特有のあのキーンという音も少なく、振動もかなり軽減できるため、恐怖感がぐっと減ります。

こうした新しい機器や技術は、費用面や導入の難しさもあり医院によって差がありますが、「痛みが少ない治療を受けたい」と希望する方にとっては大きな助けになるでしょう。
アンケートでも「最新機器の導入に積極的なところなら行ってみたい」という回答が多く見られました。

自分で取り組む“苦手”克服法

心理面のケア:マインドセットとセルフカウンセリング

実は、歯科医院側の取り組みだけではなく、自分自身でも「苦手克服」のための心構えや工夫ができるのです。
私自身、大学院で学んだ行動心理学の知見をベースに、以下のようなセルフケアをおすすめしています。

  • 恐怖を書き出す
    「痛そう」「どんな治療をされるか分からなくて不安」など、頭の中だけでふくらむ恐怖を紙やメモアプリに書き出してみる。
    目に見える形にすると、自分の不安がどれくらい具体的か、あるいは漠然としているかが分かります。
  • 逆算思考で「終わった後のメリット」を想像する
    「治療が終われば、歯がしみるのを気にせず冷たいものが飲めるようになる」といったポジティブなイメージを持つようにする。
    自分へのご褒美も設定しておくと、気持ちを前向きに保ちやすいです。
  • 歯科医院の雰囲気を事前にチェック
    最近は公式サイトや口コミサイトで、医院の写真やスタッフの対応方針が見られますよね。
    自分に合いそうなところをピックアップしておき、ほんの少しでも安心感を高めるのも手です。

“歯科受診を習慣化”するための口腔ケアとライフスタイル

歯科医院が「怖い場所」になってしまう一因として、「痛くなってから行く場所」というイメージがあると思います。
しかし本来は、痛みが出る前の段階で定期的にメンテナンスを受けていれば、痛い治療を避けられる可能性が高まります。

  • 定期健診を取り入れる
    半年に一度の歯科健診をルーティン化することで、大きな虫歯や歯周病になる前に早期発見・早期治療が可能です。
    痛みも最小限で済みますし、費用も結果的に抑えられることが多いですよね。
  • ホームケアの徹底
    正しい歯磨き方法や歯間ブラシ・デンタルフロスの活用など、予防歯科に繋がる日々の習慣を身につけること。
    私も普段から「今日はきちんとフロスまでやったかな?」とセルフチェックを欠かしません。
  • ライフスタイルの見直し
    栄養バランスの取れた食事、ストレス管理、適度な睡眠。
    これらは歯の健康にも大きく関わります。
    歯学部で学ぶまでは「食事と歯の健康の関係」はあまり深く考えなかったのですが、実はかなり密接です。
    私はヨガでリラックスする時間をつくるようにして、ストレスからくる食いしばりなどを防ぐよう意識しています。

まとめ

今回のアンケート調査を通じて、「歯医者が苦手」という声には痛みや音、匂いといった具体的な理由がある一方で、過去のトラウマや情報不足が心理的な障壁になっていることが改めて見えてきました。
しかし歯医者さんは決して「怖い場所」だけではなく、今はコミュニケーションを重視しながら患者さんの気持ちに寄り添う医院が増えています。
さらに、技術面も大きく進歩しており、痛みを抑えるさまざまな工夫が行われているのです。

もちろん、苦手意識を完全に無くすのは簡単ではありません。
しかし、少しずつ情報を得ながらセルフケアを行い、医院とのやり取りを丁寧にしていくことで「あれ、思っていたより怖くないかも」と感じられる瞬間がきっと訪れます。
自分の歯と笑顔を長く守るためにも、ぜひ「受診までのハードルを下げる工夫」を日常に取り入れてみてください。

歯の健康は、体全体の健康にも大きく関わる大切なテーマです。
日々のケアや定期健診を習慣化して、痛みの不安から解放される未来を作りましょう。
私もメディカルライターとして、そしてかつて歯学と心理学を学んだ立場から、皆さんの歯医者嫌いを少しでも減らせるような情報をこれからも発信していきたいと思っています。
ぜひ、あなたの歯と笑顔のために、一歩踏み出してみてくださいね。

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