こんにちは。
歯科ライターの吉岡朋子です。

毎日当たり前のように行っている歯磨き。
皆さんは、ご自身の磨き方に自信がありますか?

「しっかり時間をかけて磨いているつもりなのに、歯医者さんではあまり褒められない…」
「歯茎がなんだか下がってきた気がする…」

女性誌の編集者だった頃から、こうしたお悩みの声を数多く取材してきました。
実は、良かれと思って続けていた習慣が、かえって歯や歯茎を傷つけているケースは少なくないのです。

この記事では、私が多くの歯科衛生士さんたちへの取材を通じて学んだ、「歯磨きの新常識」を余すところなくお伝えします。

最後までお読みいただければ、あなたの毎日の歯磨きが「口元の健康と美しさを育む、特別な時間」にきっと変わるはずです。

なぜ今さら「歯磨き」?自己流ブラッシングに潜む3つの落とし穴

「歯磨きなんて、わざわざ習うことでもない」と感じるかもしれませんね。

ですが、毎日無意識に続けていることだからこそ、その間違いには気づきにくいものです。
自己流の歯磨きには、実はこんな落とし穴が潜んでいます。

  1. 歯茎下がりと知覚過敏:ゴシゴシと力を入れすぎることで歯茎が傷つき、後退してしまいます。また、歯の表面が削れて神経に刺激が伝わりやすくなり、冷たいものがしみる「知覚過敏」の原因にもなるのです。
  2. 頑固な磨き残し:いつも同じ場所から磨き始め、無意識に磨きやすいところばかりを磨いていませんか?利き手側の奥歯や歯の裏側などは、汚れが残りやすい「要注意スポット」です。
  3. 虫歯・歯周病リスクの増大:磨き残した歯垢(プラーク)は、虫歯や歯周病菌の温床となります。毎日の歯磨きで汚れをきちんとリセットできていなければ、将来的に歯を失う原因にもなりかねません。

正しい知識を身につけることは、将来の歯科治療にかかる費用や時間を節約することにも繋がります。
そして何より、ご自身の歯で生涯おいしく食事を楽しむための、最高の自己投資なのです。

【歯科衛生士が断言】今日から変わる!正しい歯磨き5つの新常識

ここからは、多くの人が見落としがちな「正しい歯磨きのポイント」を5つの新常識としてご紹介します。
一つでも採り入れれば、きっと変化を実感できるはずです。

新常識1:ゴシゴシ磨きはNG!歯ブラシを当てる「圧」は驚くほど軽い

最も多い間違いが、力の入れすぎです。

理想のブラッシング圧は「150g〜200g」と言われています。
そう言われても、ピンとこないですよね。

ぜひ一度、ご自宅のキッチンスケールに歯ブラシを押し当ててみてください。
200gの圧が、想像以上に軽い力であることに驚くはずです。

「毛先が広がらない程度の、ごくごく優しい力」。
これが、歯と歯茎を傷つけないための鉄則です。

新常識2:歯磨き粉は「フッ素」を活かす!つけすぎ・ゆすぎすぎに注意

虫歯予防に欠かせないフッ素。
その効果を最大限に引き出すには、歯磨き粉の使い方と、その後のうがいにコツがあります。

歯磨き粉の量は、歯ブラシの毛先全体にのるくらい(成人で1.5〜2cm程度)で十分です。
大切なのは、歯磨きの「後」。

フッ素を口の中にできるだけ長くとどめるため、うがいは「少量の水(10ml〜15ml)で、1回だけ」にするのが現在の主流です。
ペットボトルのキャップ2杯分ほどの水を含み、5秒ほどブクブクとゆすぐだけ。

最初は少し気持ち悪く感じるかもしれませんが、すぐに慣れますよ。
磨き終わった後、1〜2時間ほど飲食を控えると、さらに効果が高まります。

新常識3:「磨き残しゼロ」を目指す“磨き順”のルール化

磨き残しを防ぐ最も効果的な方法は、磨く順番を「ルール化」してしまうことです。
「今日は右上から」「次は下の前歯から」と、その日の気分で変えるのではなく、いつも同じ順序で磨く習慣をつけましょう。

多くの方が磨き残しやすいのは、利き手側の奥歯や下の前歯の裏側だと言われています。

例えば、こんなモデルコースはいかがでしょうか。

  • スタート:右上の奥歯の「表側」
  • 次に:前歯の「表側」を通り、左上の奥歯の「表側」へ
  • 折り返し:左上の奥歯の「裏側」から、前歯の「裏側」を通り、右上の奥歯の「裏側」へ
  • 最後に:上下の歯の「噛み合わせの面」を磨く

下の歯も同じように一周します。
こうすることで、「そういえば、あの部分を磨いていないかも?」という事態を防ぐことができます。

新常識4:「ながら磨き」は卒業!“鏡”を見て1本ずつ意識を向ける

スマートフォンを見ながら、テレビを見ながら…。
ついやってしまいがちな「ながら磨き」ですが、これでは汚れに的確にアプローチできません。

ぜひ、洗面所の鏡の前で、ご自身の口元に集中する時間を作ってください。
歯ブラシの毛先が、狙った場所にきちんと当たっているかを確認しながら磨くのです。

特に意識したいのは、以下の2つのポイント。

  • 歯と歯茎の境目:歯周ポケットと呼ばれるこの溝に、歯ブラシを45度の角度で優しく当てます。
  • 歯と歯の間:毛先を軽く入れ込むようなイメージで、細かく動かします。

一本一本の歯に「きれいになってね」と語りかけるような気持ちで、丁寧に磨いてみてください。

新常識5:主役は歯ブラシ、そして名脇役の「デンタルフロス」

「歯ブラシで丁寧に磨けば完璧!」と思っていませんか?

実は、歯ブラシだけで落とせる歯と歯の間の汚れは、全体の約6割にすぎないというデータがあります。
どんなに頑張っても、約4割の汚れは残ってしまうのです。

そこで登場するのが、デンタルフロスや歯間ブラシといった名脇役たち。
これらを併用することで、歯垢の除去率は約86%にまで向上すると言われています。

特別なケアではなく、歯ブラシとセットの「毎日の習慣」として採り入れること。
これが、数年後のあなたの口内環境を大きく左右します。
最初はホルダータイプのフロスなど、使いやすいものから試してみるのがおすすめです。

【お悩み別】あなたに合うオーラルケア用品の選び方

正しい磨き方を実践するには、自分に合った道具選びも欠かせません。
ここでは、基本的な選び方のポイントをご紹介しますね。

歯ブラシの選び方

  • ヘッドの大きさ:ご自身の前歯2本分くらいの「小さめ」のヘッドが、奥歯の隅々まで届きやすくおすすめです。
  • 毛の硬さ:基本は「ふつう」を選びましょう。歯茎がデリケートな方や、歯周病が気になる方は「やわらかめ」が安心です。「かため」は歯や歯茎を傷つけるリスクが高いので、歯科医の指導がない限りは避けた方が良いでしょう。

歯磨き粉の選び方

スーパーやドラッグストアには、たくさんの歯磨き粉が並んでいますね。
パッケージの裏に書いてある「有効成分」に注目して、目的に合わせて選んでみてください。

  • 虫歯をしっかり予防したい:「フッ化ナトリウム(フッ素)」
  • 歯周病が気になる:「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」「CPC(塩化セチルピリジニウム)」
  • 知覚過敏が辛い:「硝酸カリウム」「乳酸アルミニウム」
  • 口臭を防ぎたい:「LSS(ラウロイルサルコシンナトリウム)」
  • 着色汚れを落としたい:「ポリエチレングリコール」「ポリリン酸ナトリウム」

補助的清掃用具の選び方

デンタルフロスと歯間ブラシは、どちらを使えば良いか迷いますよね。
基本的には、歯茎の状態や歯間の広さで使い分けます。

  • デンタルフロスがおすすめな人:歯と歯の隙間が狭い方、歯茎が引き締まっている方
  • 歯間ブラシがおすすめな人:歯茎が下がってきて隙間が広くなった方、ブリッジ治療をしている方

ご自身の状態が分からない場合は、ぜひ歯科健診の際に歯科衛生士さんに相談してみてください。
あなたにぴったりのサイズや種類を教えてくれますよ。

まとめ:毎日の歯磨きを、未来の自分への投資に

最後に、この記事でお伝えした「正しい歯磨きの新常識」を振り返ってみましょう。

  • 新常識1:歯ブラシを当てる圧は「150g〜200g」の驚くほど軽い力で
  • 新常識2:歯磨き後のうがいは「少量の水で1回だけ」
  • 新常識3:「磨く順番」をルール化して、磨き残しを防ぐ
  • 新常識4:「ながら磨き」をやめ、鏡で毛先の当たり方を確認する
  • 新常識5:「デンタルフロス」を毎日の習慣にする

いかがでしたか?
「今までと全然違った…」と感じる項目もあったのではないでしょうか。

すべてを一度に変えるのは大変かもしれません。
まずは「これならできそう」と思うものを一つでも、今夜から試してみてください。

正しいオーラルケアは、美しい口元はもちろん、全身の健康を守る一生もののスキルです。
この記事が、あなたの健やかで輝く未来への一助となることを、心から願っています。

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